近代尾張七宝の名工とその時代
2022年9月17日(土)
2022年12月11日(日)
日本の近代七宝は、天保4年(1833)に尾張藩士の梶常吉が七宝焼の制作に成功したことによって始まりました。常吉は、オランダ船によってもたらされた七宝皿をもとに七宝技法を解明するが、それは素地の表面に細い金属線で輪郭を付け、ガラス質の釉薬を中に差す有線七宝でした。後に、尾張の遠島村(現愛知県あま市七宝町遠島)の林庄五郎がその技法を伝授されたことを機に、尾張は近代七宝の一大産地となっていきます。
開国後、販路を海外に求めた近代七宝は、万国博覧会へも出品されて高い評価を得ます。需要が拡大するとともに尾張の職人は各地に招聘され、七宝は飛躍的に技術革新を遂げていったのです。当館では、近代七宝の中でも特に明治20年代から大正にかけて、七宝技術が最も円熟した時代に制作された作品を所蔵しています。尾張七宝は、透明感のある茄子紺地を背景に、細緻な金属線と色鮮やかな釉薬で四季折々の花々や鳥たちを情趣豊かに描いた作品が数多くあり、幻想的な魅力をたたえています。
本展覧会では、林小傳治、川出柴太郎、粂野締太郎といった尾張を代表する名工の作品を中心に展示します。職人たちの類まれなる努力と西洋との出会いによって生まれた結晶ともいえる作品の数々を、どうぞご高覧ください。